副次的利益2013年01月12日

 人は地震以外ではタダでは動かない、と言う。
 だから人を動かすためには、メリットが必要なのだ。そういう訳で、何か大きなことを成し遂げたいと思う人や団体は、その成し遂げたいことのもともとの目的以外の、「副次的利益」を大声で叫ぶことで、色々な人を巻き込もうとする。

 JAXAは、宇宙開発は技術が発展するし日本の国威高揚にもなりますよ、と謳う。オリンピック招致委員会は、オリンピックは地域を盛り上げ経済効果がありますよ、パラリンピックは人々に希望を与えるんですよ、と訴える。
 それが時々、ひどく虚しく見える。

 宇宙開発は、技術発展や国威高揚のためにやることなのだろうか。オリンピックは経済効果を生み、人々に希望を与えるためにやるものなのだろうか。
 本当は違う。恐らくJAXAにいる中心人物たちの誰一人として、「日本の国威高揚のために」なんて思ってないだろう。彼らの中にある、ひりつくような欲求、それは宇宙の果てを見たい!まだ明かされていない宇宙の秘密をひとかけらでも明らかにしたい!というもののはずだ。
 オリンピック選手も、いやパラリンピック選手も、日本のためにと口では言うけれど、本当のところはただひたすらに、勝ちたい、いい競技をしたい!そのスポーツをやりたい!という思いではなかろうか。
 そしてそれは、果たして、人の心を動かさない個人的なものだろうか。その思いが表現された時に、もしかしたら、多くの人の心が共感するものではないだろうか。

 何かを求める時の理由に、説得のためだけの、信じてもいない理由が持ち出される時、人はそれを敏感にかぎつけるものだろう。
 その理由で説得される人は、結局のところ「説得されることを求めていた」人という気がする。つまり、仲間内への発信だ。
 もちろん、広告や宣伝というものは、あたかも「あなたも当然私たちの仲間であり優れた多数派でしょう?」と思わせることで効果をあげる場合もあるので、そういった理由が無意味という訳ではない。
 けれど、本当の理由を隠したまま「受け入れられそうな理由」を持ち出して説得したものは、最後には大きな不全感を招くのだと思う。
 そしてそもそも、そういった理由が、持ち出す方が期待するほど説得力を持ちえるのかも、私は疑問に思っているのだ。

 人は地震以外ではタダでは動かない。しかし、人はお金や名誉や快楽だけで動く訳でもない。人を動かす力は、実は自分が「共有できない」と思っているその本心に、すでに備わっているかも知れないのだ。
 たまには、それを信じた、「本気の説得」というものが立ち現れても、いいんじゃなかろうか。

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