野上弥生子随筆集2007年02月14日

野上弥生子随筆集,竹西寛子編,2003.9.5.第5刷(1995.6.16.第1刷),緑49-9


 夏目漱石に推薦されて作家となった野上弥生子の、生活と社会に根付いた随筆をまとめた本。どれも端然として乱れることのない文体と、確固たる精神性に貫かれた随筆であり、まさに名作というよりほかない。
 美しい言葉を話すやや古風な女性、というものを小説に出そうと思ったら、素晴らしいモデルになること確実だ。いつか書くときはお世話になろうと思う。
 とはいえ、では彼女の文章が私の心を打ったのかと言えば……残念ながら否、である。
 でもそれは野上に非があるものではなく、私という歪んだ人間には、野上のまっとうさ、正統性、ゆるぎのなさといったものに共感する要素が少ない、という話だ。現実に交流があったら、さぞやつきあいにくい相手だったろうと思う。
 ニュアンスが消えてしまうほどにまっすぐで、明晰で、知性あふれる文章群。プラチナの塊のように、凛として重い。

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