決まった音2012年09月05日

 窓を網戸にしていると、外の音や匂いが家の中によく入ってきます。家の中で益体もない思考に沈んでしまっている時には、現実に引き戻してくれるので、こういう刺激が多少必要なのかも知れません。
 どこかでカレーを作ってるなぁとか、虫の声が秋に近づいてきたなぁとか、これもまた別に役に立つ訳ではない刺激なのですけど、人間の現実というのは案外こういうものが基盤になっている気がします。

 最近ご近所のお子さんが、ピアニカに熱中しているらしくて、毎日昼から夕方にかけて、演奏している音が聞こえてきます。レパートリーは2曲くらいしかないようで、「勇気100%」と童謡の「手をたたきましょう」です。メロディが途切れ途切れに、ひたすらにリフレインされます。
 人によってはいらいらする音の風景かも知れませんが、ピアニカの音がユーモラスなせいか、妙に笑いがこみあげてくる感じです。何となく、鳥のさえずりを聞いている感覚に近いかも知れません。

 それから、ご近所なのかわかりませんが、夜にわが家の近くの道を通るらしき人がいて、この方がいつも同じメロディを口笛で吹いています。見事な口笛で、かすれや音色が毎回ほぼ同じに再現されるので、録音かと思うくらいです。
 しかし、通っている人を見たことはないので、一体誰なのかはわかりません。謎の口笛の人です。

 ピアニカの音がひとしきり鳴った後、日が落ちて、カレーの匂いがただよい始めたと思ったら、口笛が聞こえてくる。通り過ぎた後に、りんりんと虫の鳴く声が空気を満たしていく。私の最近の宵の風景は、こんな感じです。

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