最後の遺物をようやく2014年11月09日

 という訳で、「ラストレムナント」クリアしました。mixiにも同じ日記をあげましたが、一応こちらにも。



 何でもスクエニの対スマホゲーム配信システムDIVE INでの配信が決まっているとのことですが、そんなニュースはクリア後に知ったていたらくで、世間の流れとは何の関係もなく、長らく積んでおりました「ラストレムナント」PC版のエンディングをようやく見ましたよ。
 Xbox版をカゲトラ先生に貸してもらったのが2009年3月、5年以上積んでしまいました。ソフト返却後にわざわざ自分用にPC版まで購入しましたが、PC版の方が圧倒的に出来がよいので、結果的にはものすごい得をしてしまったという。


 いやー、面白いゲームでした。遊んでて本当に楽しかった。「完成度が高い」というのとはちょっと違うんですが、すごくエネルギッシュで「いつまでのこのゲームを触っていたい」と思わせる魅力があります。
 実際やりこみ要素が豊富すぎて、いつもサブクエストをやってるうちに目的を見失ってリアル予定にカットインされてしまい、エンディング前で足踏みしていたらパソコンが不調になってセーブデータクリア、というパターンで積まれていたゲームなので、今回は心を鬼にして、後半のサブクエスト関係は全部あきらめてエンディングまで持ち込みました。

 シナリオに説明不足なところが多かったり、攻略本&攻略Wiki必須の難解システムだったり、色々アレなところはあるんですが、そういうアレなところの大半がこのゲームの「面白さ」というコインの裏面だったりするので、単純に欠点とは呼びにくいですね。「好きになれば欠点が欠点に感じなくなるけど、欠点を許せない人にはどうにもガマンできない」というタイプのゲームでしょうか。
 あ、でもムービーシーンの音声が、サラウンド設定がおかしいのか時々やたらと遠くなって聞こえにくくなったりするのは単純な設定ミスかなんかだと思うので直してあげてください。うちのパソコンの環境だけだったりして。


***


 で、私自身は、戦闘システムの途方もない手応えとやりこみの広さはもちろん堪能したのですけど、何でこのゲームを5年もかかってもクリアしたかったかというと、やっぱりこの物語や登場人物たちに大きな魅力を感じたからなのかなぁと思います。

 主人公のラッシュくんが純朴熱血バカなのだけど本当にとてもいいヤツなのと、彼と親友になる領主のダヴィッド様はじめ、彼を取り巻く登場人物たちがそれぞれに思惑と個性がありつつ、みんなラッシュくんを置いてきぼりにすることなく盛り立てて助けてくれるので、FF12の時のような疎外感(笑)を味わうこともありません。

 主人公が純朴で周囲の登場人物がそれぞれ魅力的、というのは定番なのですが、このゲームの物語のいいところは、彼らの関係性のディテールが、「リアリティをぎりぎりまで追って」描かれていることだと思うのですよね。
「リアリティをぎりぎりまで追って」と書きましたが、あくまで「ぎりぎりまで追う」のであって、ガチガチに追求しないというバランスといいますか。
 本気でリアリティを追求してしまうと、一国の領主が超ド田舎平民少年と対等の友情関係を結ぶ、という現象がそもそも成立しないのですが、そういう夢をあえて土台にしつつも、ディテールをまじめに描くことでそういう現象がありえるのかもしれない、という気持ちにさせてくれる訳です。

 世間知らずの主人公が領主にタメ口叩いて腹心の部下にぶん殴られるシーンもちゃんとあるし、部下たちの領主に対する言動もあまあまの仲間ノリに流れることが決してない。現代的・ラノベ的なくだけた口語に逃げず、割と堅い言葉のやりとりが多い。主人公の両親は、実はかなり高名な立場にある人だけれど、領主に対してきちんと膝をついて頼みごとをする。
 でも、主人公は領主の「友達」だと思っているから、他のメンバーが「イエス、マイロード!」と敬礼するような場面でもそれっぽい仕草をすることはない。
 領主の方は誰にでも丁寧な物腰で接して、衷心からの心配りを忘れない言動が描写されるので、「この人は人間がよくできていて皆に慕われてるよい領主なんだなぁ」というのがプレイヤーにも伝わってくる。
 RPGでは多くの場合、主従や身分はじめ色々なニュアンスの人間関係性というのは大抵フレーバーだけで、言葉としては存在していても次第にぐずぐずな「仲間意識」に回収されてしまうのですが、この作品では人間関係のディテールが割と最後の方までがんばって保たれているので、だからこそ終盤で発揮されるさまざまな感情のやりとりが、意味を持ってくるような気がします。

 あと、敵方が「人間とは全然違う価値基準と行動原理で動いている」存在なのですが、その描写が理不尽で非人間的で陰惨残虐な迫力に満ちていて、「単純に見下したり嫌悪したりできないけれど、折り合うことも理解することも到底できない」絶望的などうしようもなさがあってよかったですね。
 ラッシュくんが途中で、「ダメだ。俺達の言葉は通じない」とつぶやくのですが、それが本当にリアルで。人倫を「外れている」のでも「越えている」のでもなく、「関係ない」ものと対峙しなければならない寂寥といいますか。H.G.ウェルズの「宇宙戦争」の火星人を目の当たりにする感覚に近いでしょうか……あそこまで人倫と無関係な存在でもないんですけど。


***


 あと、私がこのゲームをプレイしてて楽しかったところはもうひとつあって、キャラクターの(外見的)造形が、萌えや露出やセックスアピールとは違ったところで、好ましい感じを追求してある部分でした。
 主人公が一貫して自分の家族、特に妹を守り救うことを基本の行動理念にしているのですが、その重要な妹の愛らしさというのが、あんまり萌えやロリータ調の記号に頼らずに、割と垢抜けない田舎っぽい感じで描かれているので、ロリコンやペドフィリアや近親相姦の系統のいやらしさに流れずにとても素直に「家族愛だなぁ」と見守ることができたのですよね。
 また、世界にいる亜人類が、「カエル人間」だったり「魚人間・トカゲ人間」だったり、擬人系ネコと見せかけて「ネコと昆虫と人間が合体」みたいな造形になってたり、定番の「ファンタジー萌え」を外しているにも関わらず……それぞれものすごく、可愛かったりカッコよかったりする訳です。ラスレム世界の萌え頂点は、妹じゃなくてカエル学者のパグズ様ですよ、カエルかわいいかわいすぎる。
 ラスレムの猫(昆虫)亜人ソバニと、同じスクエニでもFF14の猫種族ミコッテ男あたりを比べてみると、方向性の違いがはっきりわかるかなーと思ったりします。


***


 難を言えば、もともと開発者が「行間を広くとってある」「それぞれのプレイヤーが感じることが正解」と言っているくらい、全体的に状況説明が少ないことですかね。それは確かに想像の余地という点で面白さなんですけど、なんか、想像させるところってそこじゃないだろー、みたいな部分まで「行間」にされちゃってるのが気になりました。

 レムナントとは何なのか(あるいは何の象徴なのか)、みたいな部分が「行間」にされていたのは大正解で、おかげで色々考えることが可能だったと思うんですが。
 一番きつかったのは、ラッシュの秘密に関する経緯が全部仄めかしオンリーの「行間」になってしまってるところでしょうか。
 最後の最後にそれが明かされることでの「な、なんだってー!」を重視したかったのかも知れませんが、実のところ秘密の内容自体はある種定番というか、意外なものではないのですよね。勘のいい人なら大体わかっていることの確認になってしまうので。
 もう勘付いてしまってるこっちとしては、「何でそうなったの?」「過去にどういう経緯で今の状態になったの?」という点こそ一番知りたいというか、その事実を知って背景や心境を色々想像したいのですが、その辺の「経緯」や「事実」まで全部行間扱いになっちゃっているので。感動に涙しつつも、なんかもやもやするなー、という部分がありました。
 いやラストシーンとかすごいよかったんですけどね。逆に、もやもやしているところをねじ伏せつつ感動させるだけの威力があった、とも言えるのでしょうけど。
 でもやっぱり、どんでん返しのカタルシスは深追いせずに、サブクエストなんかで上手にマスクしつつ事実を説明して欲しかったかなぁ。アカデミーヴィジストーンをコンプすると説明してあったりしたのかな……?

 感情や価値や判断といった「目に見えない」ものというのは、直接説明せず行間でそれぞれの受け手の中に構築させるものだけれど、現象や出来事や経緯といった「見える、見えたもの」は説明する(受け手の中であまり大きなブレが生じないようにする)方がいいと思うのですよね。
「何が起こったのか」の謎解き自体が根幹のミステリ駆動型ストーリーとか、事実や現実認識すら複数存在してしまうことの不安定さを表現する薮の中型ストーリーなら、もちろん話は別なのですけど、そういうタイプのお話ではなかったので。

 受け手が行間を読むといっても、行間があまりにもだだっぴろく空いてるというのは、行間ではなくただのメモ帳になってしまう訳で、「説明するべきところ」「説明してはならないところ」のメリハリを効かせるのはなかなか難しいけどストーリーテリングの重要なところだと思います。



 とまぁ、ちょっと文句を言いたい部分はありつつも、いやそれだからこそなのかな? もっと遊びたいなぁと思えるゲームで、大変うれしかったです。
 あ、続編だけは作らないでくださいね! スクエニさんはどうも続編を作るとろくでもない展開になりがちなので! 特にあのラストから次の話を作ろうとすると、どう転がしても酷い目に遭いそうですし! あんな辛い目に遭うのはFFXIII(あとFFXもか)だけにしてくれ……!

 とりあえず、あとはぽちぽちサブクエストを回収しつつ、いつものFF11に戻っていく予定です。まだ積みゲームがいくつか残っているのですが、そっちはどうしようかな……。