比較対象2007年06月05日

今日の英会話の授業のフリートークの時間で、ふと昨日の話を思い出し、R先生に「日本のマンガには暴力的な表現が多いと思うか?」と訊いてみた(つもり)。
先生の意見は「それほどでもない。少年ジャンプにあるようなものぐらいは大したことないと思う」みたいな感じだった。
「日本では子供に対する暴力表現の規制がないので、子供でも大人が読むような暴力的表現の入ったマンガを買えることを問題にする人もいる。私自身はそれは別に問題ではないと思うけれど、そういう主張も部分的には正しいように思う……」
というようなことを、ものすごく簡単かつたどたどしい表現で言うと、先生は、
「それは欧米的な価値観であって、必ずしも正しいとは限らない。それに日本の子供はそういうものに触れてもとても善良。他の規制の厳しい国を見てご覧? 確かに子供が暴力的な表現や言葉のマンガを見ていないかも知れないけれど、その国で、子供は先生や友達を銃で殺したりしているじゃないか」
と答えた。

「日本の子供は善良」という意見は、何やらはっと胸を衝かれるものだった。

世の中のマスコミや大人達の意見を聞いていると、今の子供は理解不能の闇を抱えた存在で大人に対する尊敬の念も持たぬモンスターのような錯覚(そう、まぎれもない錯覚)を抱きそうになるけれど、恐らくいくつかの国の人々から見たら、この紛れもなく平和な国の中で、子供達は紛れもなく平穏にそして善良に育っているのだ。
いくつかの国では子供は、銃を片手に殺し合いをしている。親を殺し大人を殺す子供は、たくさんたくさんいる。
それを考えれば、日本の子供は天使のような存在かも知れない。もちろん全ての人が不可思議な影を帯びているのだから、当然子供にもひそやかな影と闇は常に存在する。だが今の日本社会の一部がヒステリックに叫ぶ「今どきの子供」とは、結局、己の心の闇を投影した影絵のようなものなのかも知れない。

コメント

_ 秋 ― 2007年06月05日 23時14分38秒

「子供は社会の鏡」というけれど(言ったっけ?)、子供がおかしいと思ったら、まず社会(自分たち)を顧みた方がいいかもしれない。最近は大人の心に余裕がなくなって来ていて、小さな差異に過剰反応しているような気もする。コミュニケーションできなくなったのは、子供じゃなくて、本当は大人じゃないのだろうか。

話は違うけど、子供に「偉い人になりたいか?」と聞いたアンケートがあって、国際比較すると日本の子供が最低の結果だったので、嘆いている人もいたっけ。皮肉な言い方で申し訳ないけど「偉い人って、悪い人のこと?」と思ってしまう。いい人とか、素敵な人とか、魅力のある人とか、少しでも世の中が良くなることに関わる人にはなりたいと思うけれど、「偉い人」にはなりたいと全く思ったことはない。世の中には、いい「偉い人」もたくさんいるけど、紹介なんか滅多にされないし、たいていはそのせいで割を食っているのかもしれない。

アメリカなんかだと、何かというとすぐ「ヒーロー」を作って、宣伝しまくる傾向が強い。あの人もヒーロー、この人もヒーローってね。むりやり作っちゃう。わかりやすい形で多くの人に「偉い人」を見せて、世の中をポジティブな方向へ持っていこうと社会が意図的にやってますよね。

_ 達也 ― 2007年06月06日 11時58分53秒

うお、全く逆の話を、こないだ別の人から聞きましたよ。
しかも、全く同じ英会話教室で(笑)。
外人さんから、「なんであんなに日本のマンガは過激なのか」と言われて返答に困ったそーです。そういうマニュアルがあったりするのかしら。

個人的には性描写や暴力描写が過激というより、思想描写が過激なような気がしています@少年漫画。

_ さとみん ― 2007年06月06日 14時15分13秒

>秋さん
その手のアンケートで信用できないと思う点は、たとえば「偉い人」という語感が各国で異なることですよね。
たとえばよく言われるのが、子供に「親を尊敬してますか?」というアンケート調査ですが、日本語の「尊敬」と、訳語として使われるrespectは概念が実は微妙に違ってるんです。respectはむしろ尊重に近い概念なんですよね。だから日米で同じ問題文を使って、別のことを問うている可能性が高いんです。
そう考えると、日本語でさえかなり難しい語感を持つ「偉い人」ってのがどう訳されているか、そのアンケートの信頼性はそこにかかってくるような……(笑)。

>達也さん
アメリカの暴力規制は厳しいです。とにかくどんな理由でも血が流れるのはNG(年齢制限がかかる)。イギリスは規制があったっけな? あとアジアの仏教国も厳しいですね。ただしこっちは暴力というより性描写の方の規制ですが。
この時私が教わったのは違う国籍の先生なので、その辺の感性の違いがあると思います。

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