換羽期2006年07月28日

着替えられない小鳥は、年に何回か、古い羽毛を捨てて大々的に新しい羽毛が生えてくる時期を天から賜っている。なるほど、野の百合は思いわずらわずとも神が美しく装わせてくれるように、鳥もそういう恵みを与えられている訳だ。
わが家の小鳥が、その時期に入ったらしい。
嘴の付け根あたりから、始まる。つやつやと手入れのいい服地のように整っていた羽毛が抜け始め、嘴の回りだけ地肌が露出する。よく見ると、身体の羽毛がところどころ薄くなって、なんだか全体的にぼさぼさしてくる。古びて綻びた一張羅を仕方なく来ているような光景だけど、実際それは古びて綻び始めた一張羅に違いないのだ。
換羽期の小鳥は、体も少し弱り、羽毛が減るので一回り小さく見える。地肌の露出も増え、部分的に禿げてくる。何となくしょんぼりとしているように見えるけど、彼にしてみれば休暇のようなものなのかも知れない。
ちょっとボロッとした見た目なのに、みっともないとか惨めとかいう印象にならないのは、そういった諸々の変化を含めて、全部自然があつらえている状態に従っているからで、それは「何を着ようかと思いわずらうな」という神様の意図とはてんで違う方向へ走っている人間には決して得られないものだ。
もう少しすると、羽毛はもっと激しく抜けて、尾羽も全部自分で抜いてしまい、小鳥は不揃いな羽のかたまりみたいな外見になる。見ただけで笑っちゃうような格好だ。
でも、さらにもう少し時間が経つと、新しい羽毛はどんどん生えてくる。最初は「筆毛」と呼ばれる、硬く太い短い髪の毛みたいなつんつんした状態で、ハリネズミみたいな有様だ。その針みたいな毛が、ある日突然ふわりとひろがり、羽毛に変わる。
そしていつの間にか、つやつやした見事な新しい一張羅になっているのだ。

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