2008年06月09日

 ずいぶん昔に、「新しいAIBOが出ました!」というニュースリリースがあって、そこでは「今度のAIBOは歌って踊ります!」てのが華やかに紹介されていた。
 AIBOは、自分の部品のスピーカーから再生されるなんかの歌に合わせて、くるくる回っていた。
 その時思ったのは、「これは『歌ってる』と言っていいのか?」ということだった。どう考えても歌ってるとは言わないだろうと思った。
 けれど、データがあり、そのデータをスピーカーとアンプという部品で音に変換しているという状態を、記憶に沿って声帯をふるわせて音を出すという状態とどこが違うのか、明確に言い表すことができない。

 ひとは歌う。鳥も歌う。風さえも歌うというひとはいる。
 スピーカーは歌わない。CDコンポは歌わない。ピアノが歌っているかどうかは微妙なところのように思える。
 初音ミクは歌っているのだろうか。

 AIBOは歌っていたのだろうか。歌っていなかったのなら、どうすれば歌うと言えるのだろうか。
 軽鴨の君は、その場でジェネレートすることが条件ではないかと言う。自動演奏ピアノは歌っているのだろうか。歌っていないとしたら、それは何故?

 ずいぶん前から、気分が行き詰まるとふと泡のように浮かんでは消える思考である。それが浮かぶ理由は、単純に、誰かを傷つけることのないパズルであるからに過ぎない。その理由に意味はない。
 浮かぶ理由などより、この謎そのもの、この問いこそが重要なものである。

 どうすればAIBOは歌うのだろう。
 何をもって、ある存在は、「うたう」のだろう。